心理学用語で「転移」という言葉があります。
よく、「ガンが転移する」とか、
医学的に使われていることがありますが、心理学でも使います。
この「転移」をネットで検索すると、
転移すること=依存すること と捉えられているような記述をみかけます。
転移=クライアントがカウンセラーのことを好きになってしまうこと
という解説も見かけました。
確かに、見方によっては依存という面もあるかもしれないし、
信頼関係に基づく転移を、恋愛感情だと勘違いする人もいるかもしれません。
けど、実際、カウンセリング場面で「クライアントがカウンセラーを転移する」といえば、
「クライアントがカウンセラーのことを信頼している」ということと
ほぼ同じ意味だと考えています。
というのも、カウンセリングの第1ステップは、
クライアントがカウンセラーに信頼を寄せて、自分のことを話し始めることです。
心理学を勉強したからといって心が読めるわけではないので、
とにかく何かを話してもらわなければ始まらないのです。
なので、逆に、転移が起きないとなると、
そのクライアントの症状は一向に回復しない、とまで言えます。
多くの人は、初めてカウンセリングを受けるとき、
どんなことが起こるのか、どんなことを聞かれるのか、
カウンセラーを信じていいのかどうか、
不安でいっぱいだと思います。
なので、カウンセラー側も、「なんでも話して大丈夫なんですよ」と
安心してもらえるような雰囲気を作るし、
最初はクライアントとの信頼関係の構築に時間を割きます。
それが、「転移を起こしている」ということです。
***
もう少し詳しく書いてみます。
まず、転移というのは、
通常、クライアントからカウンセラーを見た場合のことを言います。
逆に、カウンセラーがクライアントを信頼している場合は、
「逆転移」と言います。
そして、この転移・逆転移には、陽性のものと陰性のものがあって、
組み合わせると、
・陽性転移
・陰性転移
・陽性逆転移
・陰性逆転移
という4つの種類に分けられます。
クライアントがカウンセラーを信頼しているというのは、
ポジティブな感情がついているので、陽性転移です。
陽性転移を受けたカウンセラーは、
同じように陽性の逆転移をフィードバックするケースが多いかと思います。
例えば、とても熱心に通ってくるクライアントがいるとして、
カウンセラーも「この人は変わろうと努力していて好ましいな」と思った場合、
このクライアントの話を聞くのが楽しみになるというのは、
陽性逆転移をしている証拠です。
反対に、カウンセラーに対して急に怒りだすクライアントもいますが、
これは陰性転移になります。
そして、陰性転移を受けたカウンセラーが、
「あー、あの人のカウンセリングするの嫌だなあ」と感じた場合、
これは陰性逆転移をフィードバックしてしまっていることになります。
この、転移が陽性か陰性になるかは、その人の無意識にある葛藤によります。
というのも、カウンセリングや精神分析というのは、
「葛藤をしている場面を再現すること」で心を治療していこうとするものだからです。
親に甘えたいと思いながらしてこなかった人は、
甘えることを再現するし(陽性)
親への怒りを封じ込めてきた人は、
怒りをぶつけることを再現します(陰性)。
なので、「親に愛されたかった」という葛藤を持っている人は、
愛されるように再現しますし、カウンセラーも陽性逆転移を起こします。
ここで、転移に対して知性で対応するスキルのないカウンセラーだった場合、
お互いに恋愛関係に発展してしまうことがあるかもしれません。
(通常、カウンセラーはそうならないようにトレーニングを積んでいるので、
恋愛関係になることはありません)
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ちなみに、精神分析を受けることで、
転移するのが怖いという人がいたら安心してください。
転移は悪いものではありません。
実際は、小さい頃に得られなかった満足(「甘えたかった」とか、「怒りたかった」とか)を、
カウンセリング場面で取り戻しているだけなんです。
そして、そのうちに信頼関係を学び、
カウンセラー以外にも少しずつ自分を出していけるようになれば、
生きやすさのレベルが格段に上がります。
多くの人が、心に負担のかからないような生き方ができますように。
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