『人を幸せにするものは何か?』ということが、ハーバード大学の75年間の研究で明らかになった、という記事を発見しました。
http://gigazine.net/news/20130517-thing-makes-us-happy/
英語の元記事はこちら↓
A 75-Year Harvard Study Finds What It Takes To Live A Happy Life
ざっくりと読みたい人には、NAVARまとめを♪
この研究で調べているのは、男性とその母親の関係についてです。母と息子の話ですね。
この研究結果ですが、私が勉強している精神分析の臨床結果を見ても、おおいに支持できます。
記事によれば、母と息子との幼少期の関係性が、将来の年収に影響を及ぼすとのことですが、
臨床結果からも薄々、そのような気がしていました。
研究データとして有意差が出たのであれば、臨床結果に対する裏付けが取れたようでなんだかウキウキします。さすが、ハーバードです。
個人的に、特に注目すべきだと思っているのは、
1、幼年期に母親と暖かな関係が築けていた男性は、年収が高い
2、幼年期に母親との関係が乏しかった男性は、老年において痴呆を発症する可能性が高い
3、幼年期における父親との関係は、成年期の不安や休暇の楽しみにはあまり相互関係がない
という3点です。
お母さんは「心の安全基地」
まずは
1、幼年期に母親と暖かな関係が築けていた男性は、年収が高い
について見ていきたいと思います。
「母親との暖かい関係」の、何をもってして「暖かい関係」としているのかは記事に書かれていませんが、
私の考える「母性」の定義とリンクさせて考えてみると、
・スキンシップがたくさんあること
・声かけがきちんとされていること
・母親が子どもに関心をよせて、きちんとまなざしを向けていること
プラス、
・子どものリクエストに、敏速的確に対応できていること
(「後でね」「また今度ね」「ちょっと待っててね」という言葉を言っていないということです)
が揃っている場合に、「母親と暖かい関係がある」と言えるのではないか、と思っています。
そして、この、「母親と暖かい関係を持っていた男性は、そうでない人と比べて年収が高い」という件ですが、
心理学的にみたら、きちんとしたロジックがあると思います。いくつか要素はあると思いますが、3つ挙げてみたいと思います。
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まず一つ目。
母性のある母親に育てられた場合、子どもは、「安心・安全」という気持ちを獲得します。
具体的に言えば、「お母さんは、ぼくのことをいつも見てて、愛情を注いでくれる」という安心感ですね。
そして、そのような子どもにとってのお母さんは、「心の安全基地」になります。
心の安全基地を持った子どもは、「ちょっと冒険してみようかな?」と思った時、自由に外に出られます。
「外に出て怖い目にあいそうになったら、安全基地に戻ってくればいいや」と思えるからです。
そして、安全基地の役割ができている母は、探索行動に出て帰ってきた子どもを見て、「今日、どうだった?」と話は聞きますが、それに対して怒ることはありません。
例えば、子どもが探索行動をしている間に親が目を離すと、子どもは迷子になる時がありますよね。迷子になった子どもは、大概、心細い思いをしているわけです。
そんなとき、もし母親が「どこへ行ってたの?!探したのよ!?迷惑かけないでよ!」なんて怒ってしまうと、
子どもは、「安全な基地に帰ってきたはずだったのに、、全然安全じゃなかった…」と感じることになります。
1度くらいは大丈夫だと思いますが、似たようなことが続いてしまうと、母親=安全基地ではない と判断することになり、暖かい関係を作ることができません。
ちなみに、母性ある母は、「あー、悲しかったね、目を離してごめんね」と言って抱きしめるでしょうね。そして、子どもは「お母さんのところに戻ってこれた、ほっとしたー」という安心感をさらに強めるんです。
なので、安全基地でいるためにも、母親は見守る態度を貫く必要があります。
(もちろん、生死にかかわる危険が及ぶ可能性があれば、「そこは一人で行かないで大人に一緒に行ってもらおう」とルールを伝えることは必要です)
子どもが心の安全基地を持って、一人で探索行動に出られるようになると、きっと色々な知識や経験を積み重ねることができると思います。
その結果、大人になって社会に出ても、その知識や経験が生きてきて、年収が高まるのではないか、と思うんです。
母親から「信頼」を学ぶ
母親が安全基地になれている、見守る態度を貫けるというのは、「子どものことを信頼している」からですよね。
「この子は何をしでかすかわからない」と不安に思っている母親は、心配が先に立ってしまって見守る態度を取り続けられません。
信頼されて育った子どもというのは、もちろんですが「信頼」を学びます。
「信頼」というのは、人を信じることと、人に頼ること。
私は、この2つができるかできないか、というのが、年収を大きくできるかどうかに関わってくるような気がしています。
というのも、ビジネスというのは、ほぼ100%、人と人との繋がりで成り立っています。
社内外を問わず誰かと関わる必要はあるし、BtoCであろうと、BtoBであろうと、対人間であることに変わりはありません。
あるいは、研究者の場合でも、一人で全ての研究をこなしていく人間はいないと思います。ほとんどがチームプレイですよね。
そんななか、いわゆる「仕事ができる人」というのは、対人コミュニケーションが上手な人でもあると思うんです。そしてそこには、確実に「他人を信頼できるかどうか」という要素が入ってきます。
他人を信頼できていれば、自分だけでは難しい仕事だなと思ったときは、誰かに仕事を頼むことができますよね。
そして、他人の力を借りることで、より効率の良いパフォーマンスをあげることが可能になるんだと思うのです。
逆に、他人を信用できずに自分一人で頑張りすぎた結果、頑張ることに疲れてうつ病になってしまう人も少なくありません。
母親から「思いやりの心」を学ぶ
もうひとつ。
お母さんと子どもが暖かい関係を築けている時というのは、お互い信頼関係にありますし、一心同体みたいな感じにもなっているので、
母子の間で「共感する」ことが多くなります。
子どもが「楽しいね」と言えば、お母さんも「楽しいね」と言ったり、
「美味しいね」と言ったら「美味しいね」と返ってくるような状況です。
大人でも、こうやって自分の気持ちに寄り添ってもらえると嬉しいですよね。
小さいときに母親が共感してくれた経験を多くもつ子どもは、「お母さんがしてくれたように、僕も友達に共感しよう」と思うようになります。
そしてその結果、自然と共感性が身につきます。
「共感する」というのは、「相手の気持ちを思いやる」ことですよね。
相手の気持ちに思いやる能力というのは、ビジネス面でも大きな力を発揮します。
よく、「相手の立場にたって物事を考えなさい」と言われますが、母親との関係が良好な人は、そのようなものの考え方をできるポテンシャルがあるわけです。
そして、顧客が何を求めているかに寄り添うことができます。
お金というのは、何かが「人の役に立つ」場合に流通すると思っています。
なので、相手の気持ちを思いやって人の役に立てる人間が、収入を多く得られるようになっているんじゃないかと考えています。
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って色々書くと、世の中のお母さんの不安をあおってしまう気がしますが、
とにかく、
・いたる場面で抱きしめること
・子どもの行動には見守っておいて、口は出さないこと
・何か言われたら「そうだね」ってまずは共感すること
が重要だと感じてます。
できる限りでいいし、子育てにパーフェクトなんて存在しないと思いますが、
世の中のお母様方…、頑張って欲しいなと思います。